中小企業の新規事業は、どうやって考えればいいのか

中小企業の経営者が新規事業のアイデアや事業計画を考えている様子

「今の事業だけでは、将来が少し不安だ」
「新しい事業を始めたいが、何をすればいいのか分からない」
「何か新しいことをやりたいが、良いアイデアが浮かばない」

中小企業の経営者とお話ししていると、こうした声を聞くことがあります。
既存事業が順調な会社でも、将来を考えれば新しい収益の柱をつくりたいと思うでしょう。
一方で、今の事業が厳しいからこそ、新規事業に活路を見いだしたいという経営者もいらっしゃいます。
しかし、新規事業は簡単ではありません。
思いつきで始めても、なかなか売上にはつながりません。多額の投資をして、思うような成果が出なければ、会社の経営そのものに影響する可能性もあります。
では、中小企業は新規事業をどのように考えればよいのでしょうか。
私は、まず次のことが重要だと考えています。

新しいアイデアを探す前に、自社の強みと、お客様が抱えている問題を見つめ直すこと。

そして、最初から大きく始めるのではなく、小さく試してみることです。
今回は、中小企業が新規事業を考える際のポイントを、順番に整理してみたいと思います。

中小企業の新規事業は、どうやって考えればいいのか

1.新規事業を考える前に、まず既存事業を見直す

新しい事業を考えようとすると、どうしても「何か新しいことを始めよう」と考えがちです。
例えば、

新しい商品を開発する
新しい業界に参入する
新しい店舗を出す
新しいサービスを始める
新しい技術を取り入れる

といったことです。

もちろん、こうした発想も大切です。
しかし、その前に一度、今の事業を見直してみてはいかがでしょうか。
自社には、すでに多くの資産があるはずです。
長年取引しているお客様、培ってきた技術、営業の経験、業界の知識、仕入れ先との関係、社員が持つ専門性などです。
これらは、会社が長年かけて築いてきた財産です。
例えば、製造業であれば、これまで培ってきた加工技術を別の業界に応用できるかもしれません。
卸売業であれば、仕入れ先とのネットワークや商品知識を活用して、新しい販売サービスを始められるかもしれません。
既存顧客との関係が深い会社なら、現在の商品に関連する新しいサービスを提供できる可能性もあります。

新規事業は、必ずしもゼロから始める必要はありません。

むしろ、自社がすでに持っているものを活用するほうが、経験のない分野に飛び込むよりも、事業を検討しやすい場合があります。
まずは、自社が持っている強みや資産を洗い出してみましょう。

2.自社の強みを「お客様の価値」に置き換える

自社の強みを考えることは大切ですが、ここで注意したいことがあります。
それは、会社が強みだと思っていることと、お客様が価値を感じることは、必ずしも同じではないということです。
例えば、
「当社には高い技術力がある」
「長年の経験がある」
「品質には自信がある」
という会社は多いでしょう。
しかし、お客様が本当に知りたいのは、その技術や経験によって、自分たちにどんなメリットがあるのかということです。
例えば、ある製造会社が高精度な加工技術を持っているとします。
その技術を活用することで、

他社では対応できない加工ができる
試作品を短期間で製作できる
不良品の発生を減らせる
小ロットの注文にも対応できる

といった価値を提供できるかもしれません。
このように、自社の強みをお客様のメリットに置き換えて考えることが重要です。
そして、その価値を必要としているお客様が、ほかにも存在するかどうかを考えます。

自社の強みと、お客様が求めている価値が重なるところに、新規事業のヒントがあります。

3.新規事業のアイデアは、お客様の悩みから考える

新規事業というと、画期的な商品やサービスを思い浮かべるかもしれません。
しかし、必ずしも世の中にないものを開発する必要はありません。
むしろ、既存のお客様が日頃から抱えている不便や悩みの中に、新しい事業のヒントが隠れていることがあります。
例えば、次のようなことです。

現在の商品では解決できない問題がある
商品を購入した後の作業に手間がかかっている
他社に依頼している業務に不満がある
人手不足で、今までできていたことができなくなった
必要なサービスが地域に存在しない
既存の商品やサービスをもっと便利に使いたい

こうした声を、普段の営業活動や顧客との会話から拾い上げてみましょう。
お客様に直接聞いてみるのも一つの方法です。


こうした質問から、新しい事業のアイデアが生まれることがあります。
ただし、お客様が「いいですね」と言ったからといって、必ず売れるとは限りません。
本当にお金を払ってでも解決したい問題なのか、実際に確認することが必要です。

4.新規事業の市場と競合を調べる

アイデアが浮かんだら、次に考えたいのが市場です。
どれだけ良いアイデアでも、それを必要とするお客様がいなければ事業にはなりません。
また、すでに多くの競合企業が存在する場合、どのように選ばれるのかを考える必要があります。
まず、次のようなことを調べてみましょう。

その商品やサービスを必要としている人は誰か
どのくらいの需要がありそうか
すでに同じようなサービスが存在するか
競合企業はどのような価格で提供しているか
競合企業はどのような強みを持っているか
お客様は現在、どのような方法で問題を解決しているか

インターネットで検索すれば、競合企業のホームページやサービス内容を調べることができます。
SNSや口コミを見れば、お客様の不満や要望を知る手掛かりも得られます。
さらに、既存顧客へのヒアリングや、業界関係者への聞き取りも有効です。
最近では、生成AIを使って市場や競合の情報を整理することもできます。
ただし、AIが提示する情報が常に正確とは限りません。市場規模や競合の実績など、重要な情報は必ず元の資料や公開情報で確認する必要があります。
市場調査の目的は、単に市場が大きいかどうかを知ることではありません。

自社が参入する余地があるのか、どのような顧客に、どのような価値を提供できるのかを考えることです。

5.新規事業の収益性を考える

新しい事業を考えるとき、商品やサービスの内容にばかり目が向いてしまうことがあります。
しかし、事業である以上、利益を生み出す必要があります。
そこで、早い段階から収益性を考えておきたいところです。
例えば、次のような項目を整理してみましょう。

商品・サービスの販売価格
仕入れや外注などの変動費
人件費
広告宣伝費
設備投資
開発費
その他の固定費
予想される販売数量

仮に、月額5万円のサービスを提供するとします。
10社と契約できれば、月間売上は50万円です。
しかし、そこから人件費や外注費、広告費などが発生します。
売上が50万円あっても、利益がほとんど残らない可能性もあります。
また、新規事業を始める際には、初期投資だけでなく、事業が軌道に乗るまでの資金も考えておく必要があります。
特に中小企業の場合、新規事業に資金を使いすぎると、既存事業の運転資金に影響することもあります。

売上の可能性だけでなく、利益と資金繰りの両方を見ることが大切です。

最初から精密な事業計画を作る必要はありません。
まずは、売上・費用・利益の簡単な試算を作り、どの程度の売上が必要なのかを把握することから始めましょう。

6.最初から大きく投資しない。まず小さく試す

新規事業を始めるとき、最初から大きな投資をする必要はありません。
むしろ、最初は小さく試してみることをおすすめします。
例えば、新しいサービスを始めたいのであれば、いきなり専用の設備や人材を用意するのではなく、まずは既存の設備や人員で対応できないかを考えます。
新しい商品を販売したいのであれば、大量に仕入れる前に、少量でテスト販売してみる方法もあります。
新しいサービスであれば、正式なサービスサイトを作る前に、既存顧客に提案して反応を確かめることもできます。
具体的には、次のような方法があります。

既存顧客に試験的に提供する
少数の顧客に限定して販売する
簡単な紹介ページを作って反応を見る
セミナーや説明会を開催して需要を確認する
試作品や試験サービスを提供する
事前相談や予約を受け付けてみる

こうした取り組みを通じて、お客様が本当に必要としているのか、どのくらいの価格なら購入してもらえるのかを確認します。
ここで大切なのは、最初から完璧な商品やサービスを作ろうとしないことです。

実際にお客様に提供し、反応を見ながら改善していく。

その繰り返しが、新規事業を育てることにつながります。

7.新規事業を担当する人と、実行体制を考える

新規事業は、アイデアや計画だけでは進みません。
実際に誰が動くのかを決める必要があります。
中小企業では、社長自身が新規事業を担当するケースも多いと思います。
しかし、社長は既存事業の経営や営業、社員の管理など、さまざまな仕事を抱えています。
そのため、新規事業を始めても、日々の業務に追われてなかなか進まないということも起こります。
そこで、最初に考えておきたいのが実行体制です。

誰が責任者になるのか
誰が営業するのか
商品やサービスを誰が提供するのか
顧客対応は誰が行うのか
どの業務を外部に依頼するのか
社長はどこまで関与するのか

こうしたことを整理しておくと、事業を始めた後の混乱を減らせます。
また、最初から専任者を採用するのではなく、既存社員や外部の専門家と協力して進める方法もあります。
ただし、既存事業の仕事に新規事業を上乗せするだけでは、社員の負担が大きくなる可能性があります。
新規事業を進めるために、既存業務の優先順位や役割分担を見直すことも必要です。

8.新規事業は「始めること」より「続けること」が難しい

新規事業は、始めること自体が目的になってしまう場合があります。

新しいサービスを発表した。
ホームページを公開した。
広告を出した。
営業を始めた。

しかし、思うように売れない。
そのときに必要なのは、結果を確認し、原因を考え、改善することです。
例えば、

問い合わせが少ないのであれば、集客方法やサービスの伝え方を見直す。
問い合わせはあるのに契約にならないのであれば、価格や提案内容、営業方法を見直す。
契約は取れているのに利益が残らないのであれば、提供方法やコストを見直す。

このように、どこに問題があるのかを確認することが大切です。
そして、一定期間取り組んでも成果が見込めない場合には、事業の方向性を変えたり、撤退したりする判断も必要になります。
新規事業を始める前に、どのような結果が出たら継続するのか、どのような場合には見直すのかを考えておくと、感情だけに左右されずに判断しやすくなります。

新規事業は、始めることがゴールではありません。事業として継続できる状態をつくることが重要です。

9.新規事業を考えるための、5つの質問

ここまでの内容を整理すると、中小企業が新規事業を考える際には、次の5つの質問が役立ちます。

① 自社には、どのような強みや資産があるのか?
技術、経験、顧客、取引先、社員の専門性など、自社がすでに持っているものを確認します。

② お客様は、どのような問題を抱えているのか?
既存顧客へのヒアリングや日頃の営業活動から、新しいニーズを探します。

③ その問題を解決するために、自社は何ができるのか?
自社の強みを活用して、どのような商品やサービスを提供できるのかを考えます。

④ 事業として利益を出せるのか?
市場や競合を調べ、販売価格、コスト、必要な売上などを試算します。

⑤ 小さく試すためには、何をすればよいのか?
大きな投資をする前に、少数の顧客や既存の設備を活用して、需要を確かめる方法を考えます。

この5つを順番に考えるだけでも、漠然としていた新規事業のアイデアが、具体的な計画に近づいていきます。

10.新規事業を考えるときこそ、経営者の相談相手が必要

新規事業は、経営者にとって大きな決断です。
自社の将来を考え、新しい可能性に挑戦することは重要ですが、同時にリスクも伴います。
そのため、経営者一人で考えるのではなく、誰かに相談することも大切です。
社内の幹部や社員、取引先、専門家など、さまざまな立場の人の意見を聞くことで、自分では気づかなかった視点が得られることがあります。
ただし、相談相手が増えるほど、意見が多くなり、何を優先すべきか分からなくなることもあります。
そんなときには、会社の現状や経営者の考えを整理し、選択肢を比較し、実行することを一緒に考える相手がいると心強いでしょう。
新規事業のアイデアを出すだけでなく、

事業の方向性を整理する
市場や競合を調べる
収益性を試算する
優先順位を決める
販売方法を考える
実際に顧客に提案する
結果を検証して改善する

こうした一連の取り組みを進めることが必要です。

新規事業は、特別なアイデアから生まれるとは限らない

新規事業というと、何か画期的なアイデアや、これまでにない商品・サービスを考えなければならないと思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
既存顧客の悩みを解決すること。
自社が持っている技術や経験を、別の形で活用すること。
今まで提供してきたサービスを、少し違う顧客に提供すること。
こうした身近なところから、新しい事業が生まれることもあります。
大切なのは、アイデアを思いつくことだけではありません。
そのアイデアに需要があるのか。
自社に実現できる力があるのか。
利益を生み出せるのか。
そして、実際に動かせるのか。
これらを一つずつ確認していくことです。

新規事業は、考えるだけでは始まりません。小さくても、実際に試してみることが大切です。

そして、試した結果を見ながら、事業を育てていく。
その積み重ねが、会社の新しい可能性につながっていくのだと思います。

「社長の右腕」として、新規事業を一緒に考える

私が取り組もうとしている「社長の右腕」は、経営者の隣で、経営・営業・集客・Webなどの課題を一緒に考え、実際に動かしていく仕事です。
新規事業についても、単にアイデアを提案するだけではありません。
経営者の考えを整理し、自社の強みを確認し、市場や顧客のニーズを調べ、事業として成り立つ可能性を一緒に考えます。
そして、必要であれば、ホームページや営業資料を作り、見込み客に提案し、反応を確認するところまで取り組みます。
もちろん、事業の成功を保証することはできません。
しかし、考えるだけで終わらせず、実際に動き、結果を見て改善することはできます。
新規事業を始めたいけれど、何から考えればよいか分からない。
そんなときには、まず現状やアイデアを整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

社長の隣に、もう一人。

一緒に考え、一緒に動き、会社の新しい可能性を探していく。
それが、私の考える「社長の右腕」です。


これまでのコラムが「営業」「集客」「Web」「AI」などの個別課題を扱ってきたのに対し、今回は経営者の関心が高い「新規事業」をテーマにしています。
新規事業は、経営・財務・営業・マーケティングを横断するテーマです。
「社長の右腕」は、単なるWeb支援ではなく、経営者と一緒に会社の課題を考えるサービスです。

中小企業が悩める個別の課題についてはこちら ↓

  1. 「社長は孤独だ」と言われる理由
  2. 「なぜ中小企業のホームページは、作り直しても問い合わせが増えないのか」
  3. 「営業が厳しい会社は、営業ではなく『集客導線』を見直したほうがいい」
  4. 「中小企業の社長が生成AIを使うなら、まず何から始めるべきか」
  5. 「社長の右腕とは、具体的に何をするのか?」

SEO、AI、HP、営業改善だけではなく、経営・営業・集客・Webを横断して考える「社長の右腕」という仕事についてはこちら ↓

【 社長の右腕|中小企業経営者の経営・営業・集客・Webを実務で支援 】

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