マーケティングコンサルタントの松川勝成です。
めざせ、皆さまの模範。
めざせ、有益な情報の無料ご提供。
「結果」より「行動」でまいります。 

ご存じ、フィリップ・コトラーは、
「行動経済学は“マーケティンング”の別称にすぎない。
過去100年にわたりマーケティングは経済学とその実践に基づく新たな知識を生み出し、
経済システムが機能する仕組みに関することに役立てた」
と言っています。

フィリップ・コトラー

私自身、マーケティングと行動経済学は類似する点が多いと感じ自己流で学んでいました。
ちなみに、行動経済学が生まれた1970年代以降、3人のノーベル賞受賞者を生んでいます。
その中の一人で、著作が読み物としてもっとも解かりやすいダニエル・カーネマンが好きです。
「ファスト&スロー ( Thinking, Fast and Slow )」は、
副題:“あなたの意思は、どのように決まるか?” とされ、
私自身と弊社のビジネスサポート志向に大きな影響を及ぼしています。

ファスト&スロー

しかし、いかんせん他人にお伝えすること難解でして。
これを、もっと実証的に解かりやすくお届けしたい。
これが、今回のブログの趣旨です。

1.伝統的な経済学の限界

伝統的な経済学の考え方は、
「人間は合理的に行動する」
です。

生まれた頃はよかったのですが、人間の生活、社会様式、政治・経済が複雑になってくると、実際の経済行動に当てはまらないことが目立ってきました。

・スーパーのレジや銀行のディスペンサーで、コロナ禍において並ぶ仕切り線があります。
列が長くなり合理的ではありません。が、真面目な人間さんは殆ど守ります。
これ、たとえコロナ禍でなくても遵守されるそうです。
さらに、レジ前にある、乾電池、ガム、チョコに手を出してしまうこと。
経験ありませんか?

・頑張って痩せて美しいドレスを着るぞ!と生活しているときの楽しい飲み会。
合理的には、飲まない・行かないか量を自制すべきです。
でも多くの人は飲んでします。「まぁ、“今日くらい”いいか・・・」

・テレビ通販を何となく観ていて、最初買う気がないのです。
たとえいい服の商品が出ても合理的には、「ふ~ん」でスルーですが、実際はそわそわ・・・と落ち着かない。
しかも、あと、3時間以内だけ! 先着100名だけ! 2着買うとお値段、1.5倍と超お得。
いらないのに買う人が多いこと。しかも、2着。

非合理的な人間の「行動心理」です。

そこで生まれたのが、「実際」に即した、人間そのものをみつめた、
「心理学」+「経済学」 = 「行動経済学」です。

行動経済学の代表的な人間の心の動きの観察に「ヒューリスティック」があります。
自身の経験から、直感的、即断、努力・我慢を要さないようなことですが、結果オーライであることが多いです。

他にも基本的な動きとして。
「バイアス」「選択的知覚」「少数の法則」「平均への回帰」「ステレオタイプ」「初頭効果」「ピークエンドの法則」「ハロー効果」「プラシーボ効果」「サンクスコスト効果」「フレーミング効果」「アンカリング効果」「極端の回避効果」「時間的選好」「社会的選好」「スノッブ効果」「同調効果」「バンドワゴン効果」「ヴェブレン効果」「互恵性」「利他性」などがあります。
言葉から想像できるものありませんか?
どれも、あるあると経験したものばかりです。

この意思決定のもとを説明、解明したものが、「プロスペクト理論」です。
上述のカーネマンが現代の人間の“あなたの意思は、どのように決まるか?” を説いたものです。

簡単にいうと、人は損と徳を合理的に見分けられるか? という問いに対し。
答えは「否」でその理由として幾つかあげています。
「価値関数」「損失回避性」「リスク回避性」「リスク志向性」「参照点」「確率加重関数」「前処理」「メンタルアカウンティング」「ハウスマネー効果」
などです。

さらに最近、テレビCMにも出ている「ナッジ効果」
“ヒジで軽く小突くように、自発的に望ましい行動を選択するように促す”
ことです。

これらもどれも想像もつきます。
が、ちゃんと説明すると難しいので、マーケティングの成功事例にのせてご説明します。

2.マーケティングに活かした行動経済学の活用・成功事例

行動経済学

1)手間がかかる作り方にしたらパンケーキミックスが売れ出した。
・水を加えてまぜるだけ! < 卵と牛乳を加えてまぜればできる!
⇒ 合理的 < イケア効果(作り物ではなく自分で作ったよ)、社会的規範(ありもの、さぼりではなく、自分でちゃんとやってるよ)

2)20円の違いなのに、1980円と2000円では天と地の差。
・端数価格:説明の必要はありませんね?
・ヴェブレン効果(威光価格):逆に、ブランド品はけちけちせず、高い方が売れます。

3)明治のザ・チョコレートが店頭で人をひきつけるワケ。
・フレーミング効果:他社の製品と徹底的に差別化して特別感を演出。
⇒パッケージデザインの縦書き、縦置き。8種類のラインナップ(そんな違い解かるの? 失礼!)。裏にレーダーチャートで違いやこだわりを共有。

4)消費者をひきつけるセブンイレブンの戦略。
・2割引き(合理的)より、しのごの言わず、100円均一セール=フレーミング効果。
・しのごの言わず、韻ふみのCM洪水で記憶に残りやすくする。

5)人気タレントへの信頼感が商品の印象を良くする。
・前述のテレビ通販のそれぞれの効果です。
・加えて、ハロー効果:美人やかっこういい、人気のタレントが出演する商品が売れる。

6)ダイエット事業を大成功させた仕組。
・ライザップです。大きな裏の事情は2つあります。
返報性:専任トレーナーがつきっきりで二人三脚。効果を出してトレーナーの労力に報いてあげたい。
サンクコスト効果:「全額返金します」と言われても、折角ここまで頑張ったので、もうちょっと続けよう(現状維持バイアス)。

7)クラウドファンディングが大金を集めやすいワケ。
・個人的には、好きではありません・・・。大義を感じません。理由は2つあります。
同調効果:他人の支援額が見えるため安易に同調してします。一人でいるのは不安。
利他性:社会貢献している感覚が投資のハードルを下げる。私見ですが大いな勘違いです。

8)ネガティブなキャッチコピーが購買意欲をそそる理由。
・すごい除菌効果 < まな板には菌がいっぱい!
損失回避性:確率は低いのにネガティブな印象、イメージで恐怖心を煽る。
スポットライト効果:「自分のことだ!」と思わせて危機感を倍増させる。

如何でしょうか?
あるあるがいっぱいではないでしょうか。

2つ申し上げます。

ひとつは、個人の生活もビジネスにおいても、この心理行動を理解し間違いを減らすこと。
ひとつは、いけないことを煽るのではなく、素晴らしい商品、サービスであれば、この心理行動を利用して市場、消費者にWin-Win な情報をお届けし正しい判断を促すこと。

頑張ってまいりましょう。

-------- 【参考】
「行動経済学」 阿部誠監修 新星出版社
「ファスト&スロー」 上下巻 ダニエル・カーネマン ハヤカワノンフィクション文庫
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