追従型Web広告の行方 ( クッキー規制への対応 )

マーケティングコンサルタントの松川勝成です。
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「結果」より「行動」でまいります。 

いま、WEB広告業界、ひいてはデジタルマーケティングに大きな変動期がきています。
欧州の個人情報保護の規制強化に端を発し、追従型の広告自体が「悪(?)」のような間違った風潮も感じています。

これは甚だしい勉強不足、錯誤です。
私はWEB広告のサポートもお請けしているから申し上げるのではありません。
「個人情報保護士」「企業情報管理士」としての知見から危惧するものです。
正しい実状の把握と今後の展望について復習と私見を共有します。

まず、論じられる対象は、WEB広告のうち、検索型広告であり、リスティングではない方。
総称、ディスプレイ広告について。

Advertising

復習します。

Webサイトやアプリの広告枠に表示される画像や動画、テキスト広告のことです。
画像や動画で視覚的にアプローチでき、ユーザーの視認性は高く、興味を惹きやすい。
広告枠をもつ媒体と直接契約するケース(バナー・純広告)も現存しますが、多くは以下特徴をもつ広告をさしています。

・年齢や性別、地域、過去のWebサイト閲覧履歴などでターゲティングを行うことが可能。
・自社のサービスや商品を知らない潜在層へのリーチに適している。
・一方で能動型(検索)ではなく受動型なので離脱率は検索より高い。
・トリガーとして機能するので次にモチベーションアップにつながる使い方必要。

1.アドネットワーク型広告:
・多数のサイトを集めて形成された広告ネットワーク。
ネットワークに登録されたサイトから親和性の高い配信先を選んで広告配信可能。
・関心の高いユーザー層をセグメント(地域、性別、年齢層など)指定も可能。
・ただし、配信先もセグメントも説明ほど正確ではなく、大雑把、どんぶりが実情。
それを理解しての使いこなしが必要です。
主なサービスはこの2つ。
・Google ディスプレイ ネットワーク(GDN)
・Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)

2.DSP(Demand-Side Platform):
・広告ネットワークの一種。同時に複数のサイトに広告配信可能。
・小規模であっても親和性の高い配信場所は貴重であり予期せぬリーチも生まれる。
・サイトユーザーの行動履歴をみて関連度の低いサイトに広告表示回避とあるが、1番同様、大雑把。

3.リターゲティング(リマーケティング)広告:
(広告媒体で呼び名が異なる。Yahoo!「リターゲティング」、 Google「リマーケティング」)
過去に自社・関連Webサイトを訪問したユーザーに対して表示させる広告です。
・より自社の商品やサービスに興味・関心のあるユーザーに絞ってアプローチし、CV(購入や会員登録)率高い。
・顕在層や顧客層に適する一方、ユーザーにしつこいと思われるリスクと法制強化で実施に難がでてきた(本コラムの主題)。
・アドネットワーク同様、この訪問歴データ(ユーザーボックス)を媒体側に任すと大雑把なので自社で取集が望ましくノウハウが必要。

4.スマート ディスプレイ キャンペーンの作成と管理:
・最近、Googleが推奨している広告形態。ターゲット設定や入札単価設定、広告の作成、またそれらの最適化を自動で行います。
・AI(機械学習機能)を使って、新しい顧客や既存の顧客を自動的に見つけ出し、適切な入札単価を設定し、ウェブやアプリ上のあらゆる画面や広告スペースに適応する魅力的な広告を作成します。
・スマート ディスプレイ キャンペーンを採用すると、他のディスプレイ キャンペーンと比較して、同じコンバージョン単価(CPA)でコンバージョン数が平均 20% 増加しています。
と、Googleは公言しているが、CPAに重きを置きすぎて、予算管理が暴走している咎があると実感しています。利用のノウハウを研究する余地あり。

本題です。

クッキーによって、サイトの閲覧情報が「セッションID」として付与され、個人情報の特定に至らずとも欧州で問題視されてきました。
(技術的な解説は検索すればぼこぼこ出てくるのでそちらに譲ります)

それは、技術的な問題よりも、消費者(訪問者)が自身の閲覧情報をデータとして勝手に取得されたり、誰にどう使われているのかが分からないところに本質があります。

勝手に取得する連中をサード・パーティー・クッキーといい、欧州では企業が同意なくクッキーを付与することを禁止しました。
いわゆる「GDPR(一般データ保護規制)」である。
これにより、初回アクセス時にクッキー利用許諾・同意の手順が増えてきました。

既に、Safari(AppleのWebブラウザー)や、Firefox(同、モジラ)では、サード・パーティー・クッキーをシャットアウトしています。
最もシェアが高く影響の大きい、Chrome(同、Google)も、2020年1月に2年以内にシャットアウトを発表しました。
そして、21年1月25日、同社は、脱クッキーの代替技術「FLoC(フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート)」の実用性を解説しました。
( GoogleBLOG原文:
https://blog.google/products/ads-commerce/2021-01-privacy-sandbox/ )

これは、AIの機械学習によりIDをふるターゲットの対象を、これまでのブラウザ訪問者個々人に特定せず、同じ動向をしている「コホート」と呼ぶ数千人単位のグループにふる手法。
理屈上は個人特定をせずほぼ差異のない広告配信を実現でき、3月より検証を開始しています。

GoogleFLoC

苦しくなるのは、サード・パーティー・クッキーの恩恵、甘い汁を吸ってきた広告会社である。
今後の方向性としては、3つあります。

方向性1:Googleが開発を進める代替技術の利活用(しかし、制約の範疇でのサービス提供なので広告会社の出番、利益率は下がると想定される)

方向性2:広告に活用する識別子の独自開発(しかし、開発費が莫大である)

方向性3:クッキーに依存しない広告商品の開発(しかし、未知であり市場に受け入れられるか疑問)

尚、当面、自社・関連サイトに訪問した個人のWebブラウザに対しても、従属型の広告配信のパーミッションをとっていれば、これまで同様、リマーケティング型の広告配信は可能です。
これは、追従自体が悪で危ないものと勘違いしている人には正しく再認識して欲しいポイントです。

ユーザーにとって、そもそも興味のある情報なので、“正しく”クッキーの特性を理解していればむしろWin-Winの関係になることを啓蒙することが肝要だと強く考えています。

この独自のユーザーボックス(訪問者データ構築)と、Googleの代替技術にのってターゲティングしてゆくことが、弊社の方向性です。

皆さま、配信側(広告、Web関連会社)、利用側(広告主企業)の立場いずれにいても、自社の方向性をしっかり定めるべき時期にきています。

思っているより時間の猶予はありません。

(Appleとソーシャルメディア・アプリケーション企業を代表するFacebook の脱クッキーにおける新しい戦争については、またの機会にお伝えします)

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【参考】
「日経XTREND 2021年4月号 セレンディピティーはどうつくる?」
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【中小企業の経営者が今すぐ始めるべき「集客の仕組みづくり」|株式会社レゾンデートル 】
https://youtu.be/X0D-lijQVJs 

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